今月の編集長おすすめのポエム

「走り高跳びⅡ」遠山岳治
「産まれしもの」 林 恭子

※過去の作品はこちらから

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「走り高跳びⅡ」遠山岳治

垂直に立ち上がる
地平線を眺め

手に望むものは
何も無い

白と黒に塗り分けられた
高圧電線のバー
遥かに
僕は立ち
浮き沈みしながら
フィールドを
走り出した

空間がバーを軸にして
徐々に狭まり
大きく開いた
眼で
口で
飛びかかった

僕の空体力学
ベリーロールに
強靱な
踏み切り足の
アキレス腱を
意識した時

僕は死んでいる

石化した
胸で
肩で
引き足で

仰け反るように
超えると
太陽が
煌めくように
白熱する

すると
マットの海に落ち
僕は
生き返る

海の飛沫に
濡れもせず

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「産まれしもの」 林 恭子

黄金色の麦の穂が並打っている
豊作を悦ぶ素直さは失なわれたのか
ほんの少量の水溜りに落ちた水滴が
精神(こころ)に刺さり 無垢な精神に矢を立てた
爽やかな夏の朝は消え去り
苛立った生き物は刺毛(とげ)を逆立てる

頭(こうべ)を垂れた稲穂の愛情は
秋の実りの色を持てないのか
精神は安寧を取り戻せるか

多分 誕生したばかりの地球は
この大地は
希望と期待に 溢れていた
産れはじめた酸素は大歓迎され
伴って産れた邪念は 無垢な精神に
執拗に食い下がってきた

圧さえる力を失くしつつあるのか
歓迎されしものよ

懸命に産れた地球の子供たちは
懸命に生きようと育っている